「税関検査」と聞くとどのような検査をイメージされるでしょうか。「全て商品の中身を開けられるの?」「変なものは入っていないのに、どうして?」など色々な疑問があると思います。
また、輸出入者の中には、通関業者の税関検査費用について分からないことが多いと思います。
ここでは税関検査の目的や種類を学び、また疑問が多い税関検査費用についても説明いたします。
税関検査の目的
「税関検査対応費もかかるのに、理由が分からないと納得ができない!」
「納期に間に合わない」
など、輸入者が不満に思う理由は十分理解できます。そして、この税関検査を拒否できないので不満に思うのはなおさらです。私は、物流営業という立場からそのような声を何度も聞きました。しかし、税関は、税関の事情もあります。税関検査の目的を理解することで、少しでも納得していただければ幸いです。今回は、輸入に事例に上げて税関検査の目的を紹介します。
税関検査の目的
・社会悪物品の流入を阻止すること。
・貿易の秩序を維持するとともに関税等の適正な徴収等を確保すること。
税関HP 1112 輸入貨物についての税関検査(カスタムスアンサー)
基本は、この2点です。そして、今から私の現場経験を踏まえて、私なりの考えを述べます。
「この社会悪物品の流入を阻止すること」に関して
覚せい剤や麻薬、拳銃、偽ブランド品などの物品がないか、という観点から検査を行います。このような検査は、刑事事件に該当する可能性もあるため、検査の理由を開示ができない税関の事情も私は理解できます。
「貿易の秩序を維持するとともに関税等の適正な徴収等を確保すること」に関して
他法令関係
輸出入される商品には、関税法だけでなく様々な法律で規制されており、もちろん関係省庁の許可・承認が必要なものあります。税関としても許可・承認された商品が正しいか確認する必要があります。
原産国
原産国に関しては、輸入申告時は、必ず正確な原産国を伝えなければなりません。理由は、原産国によって関税率が異なる可能性があり、適正な関税の徴収ができないからです。
適正な申告に関して
例えば、
- インボスの数と実際の数が異なる。
- インボイスと実際の商品が異なる。
- インボイスに記載のない予備のカタログや化粧箱が混入されていた。
など、これは一部ですが、実際に私が税関検査で経験したことです。予備のカタログや化粧箱は、輸出者が親切に同梱しており、輸入者は全く知らなかったというケースもありました。
このように輸入者の思いもよらないケースにより、不備がある場合があります。税関としては法律に従って適正な関税等の徴収をする必要があるため、税関検査を実施する必要があるのです。
税関検査の区分と種類
税関検査の区分
基本的に輸出入申告は、Naccs(ナックス)という「輸出入・港湾情報処理システム」で行います。そのシステムで上で下記の税関検査区分で表記されます。
- 区分1:簡易審査:輸出入申告後すぐに許可
- 区分2:書類審査:税関職員による通関書類の審査
- 区分3:検査扱い:税関職員の現物審査
税関検査の種類
そして、区分3「現物検査」になった場合、下記のように分類できます。
検査場所について
- 検査場検査(大型X検査を含む) 税関の検査場です。これが一般的です。
- 現場検査 税関検査場への持ち込みが困難な貨物に時(大型設備など)
- 艀中検査 艀に積んだままの検査
- 本船検査 外国貿易船に積んだままの状態で検査
検査内方法について
- 見本検査検査
- 一部指定検査
- 全部検査
見本検査は、知的財産関係になります。一般的には、一部指定検査が多いです。
税関検査費用について
ところで税関検査費用は、「実費」なっていますが、
具体的にいくらですか。
なぜ、実費が多いのか。
理由は、税関検査の内容やその検査結果によって、さまざまなケースが考えられるからです。検査で異常がある場合(申告外物品や社会悪等)は、検査にかかる費用は予測できないので、今回は、海上(コンテナ)の税関検査かつ輸入の場合について考えてみましょう。
X線検査の場合
基本は、検査対象貨物の一部または全部をX線検査場に持って行き検査を受けます。
特に異常がない場合は、X線検査場のみの移動になりますので追加料金は
横持ち料(X線検査場までの配送料)です。
基本検査終了後そのまま納品先へ配送に向かいます。
開披検査の場合
基本、税関は荷役作業(開梱やデバンニング等)は行いません。検査場にいる指定の業者が、税関からの指示に従って作業を行います。
検査する貨物のコンテナ内の位置、荷姿、数によって作業内容が変わります。
位置
検査する貨物がコンテナのどの位置にあるかによって、デバンニングの作業内容が変わります。もちろん、手前にありかつフォークリフトで荷扱いする方が簡単です。バラ貨物でコンテナの奥の位置にあれば、もちろん手間が掛かりますね。
荷姿
カートンや木箱によっても作業内容が変わります。木箱の場合は、開梱作業に時間がかかりますのでその分費用がかかります。
数
もちろん検査の数によっても作業時間が変わります。
このように色々なケースがあるため、一概に検査費用の明確な見積もりは難しいのです。
税関検査は回避できるの?
税関検査の「目的」は理解しても、どうしても税関検査を回避したい時はあると思います。
私の経験上
税関検査は、基本的に回避できない。しかし、可能性はゼロではない。
というのが私の結論です。もちろん、税関の方ももちろん感情を持った人間です。輸入者の事情によっては考慮してくれる可能性はゼロでないと思っています。ただし、検査を省略を依頼するのであればそれなりの準備が必要です。
原則:商品情報をしっかり準備する。
- 商品カタログ
- 実際の商品写真
- 内装の写真
- 外装の写真
- バンニング時の写真(海上輸送)
- バンニングプラン
全て揃う必要はありませんが、追加資料があれば通関業者に税関検査を省略してもらうよに、税関へ打診を依頼してみましょう!ただし、税関も事情がありますので運が良ければ程度という気持ちでいてください。私は税関職員ございません。あくまで想像ですが、税関検査の目的を考えれば次のケースを想定できると思います。
想定ケース<一部>
・ある国の同類商品の中から社会悪の商品が発見された。
・過去に適正申告をしていなかった輸入者であるなど。
ほとんどは、システムでランダムに税関検査になります。しかし、上記のような理由がある場合はいくら検査省略を依頼しても、省略になることは難しいでしょう。
私の経験数から申し上げると、検査省略はほとんどありません。しかし、この原則を守ることで下記のメリットあります。
区分2「書類審査」から区分3「現物検査」へ移行しにくくなる。
当然、「書類審査」から「現物検査」へ移行する可能性はあります。私の経験上、インボイス・パッキングリストに整合性があり、不備もない。また、追加資料もしっかりしているという場合は、書類審査で終わることが多いです。
「開披検査」→「X線検査」へ変更になる場合がある。
「開披検査」→「X線検査」の変更は何度か経験しました。輸入者にとっては、検査対応費が削減できるので料金メリットがあります。また、急ぎの場合は、納期も開披検査に比べれば早くなりますのでメリットです。もちろん追加資料を税関に提出をして相談をします。
検査強化月間があります。
知らない方もいると思いますが、警察の交通安全運動と同様に検査強化月間があります。事前に税関のHPに掲載されます。また、国際会議などが実施される場合も同様にテロの対策として検査強化されます。
輸入時期を変更することは難しいですが、税関検査の確率が上がるということで覚悟はできますね。
よくあるトラブル(経験談による)
ここでは、私が経験した税関検査のトラブルを一部紹介しましょう。
余分な空カートン、予備の化粧箱やカタログが付属されいる。
これらの商品は、インボイスに金額や個数等記載しなければなりません。しかし、輸出者が親切で入れることがありますので、税関検査の時に発見されることがあります。輸出者にこれらの商品もインボイスに記載するように依頼しましょう。
輸入申告と異なる商品が発見された。
私の場合は、PP製品で申告したところ税関検査で確認すると金属製という商品がありました。もちろん税率が変わります。輸入者に確認すると、商品説明を間違えたとのことです。しかし、基本間違えたでは済まされないこともございますので、自社が輸入する商品はしっかり確認しましょう。
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